開発者レター:霊月スペシャルステージ「照影の廟」

2026-08-29 LATEST

霊月の夜。江南の水郷、その奥深くに佇む長らく廃れた古い廟に、再び灯火がともります。この地には、古くから伝わる言い伝えがあります。「廟に入りて、水を覗くなかれ。水を覗けば、前世の己が映る。」――照影の廟の物語は、侠客の皆様がその門を押し開いた瞬間から始まります。

廟の中で侠客が拾うのは、誰が残したものかも分からない一巻の「渡厄巻」です。この残された巻物には災いを避ける術こそ記されていますが、生き延びるための道を示してくれるわけではありません。長く見つめてはならない古井戸、静かに佇む紙人形、そして供物台に供えられた供物――その一つひとつに、さらなる手がかりが隠されているかもしれません。

振り返るというほんの一瞬の行動。ひと言返事をすること。あるいは、ごく些細な振る舞いさえも、その後に起こる出来事を左右します。目の前に現れる怪異を避けるだけでは、この廟から生きて抜け出すことはできません。この廟に残された数々の「規則」を少しずつ知り、その意味を解き明かしていくことで、初めて本当の出口へたどり着くことができるのです。


中国の一部地域に伝わる民俗伝統において、旧暦7月は「霊月」と呼ばれています。この時期は先祖を祀り、供物を捧げ、紙銭を焚き、灯籠を灯す風習がある一方で、「決して行ってはならない」数々の「禁忌(タブー)」も語り継がれてきました。

以前、公式SNSで公開した「鬼月規則怪談」でも、こうした数々の戒めをご紹介しました。「〜してはならない。さもなくば、禍を招く」――こうした規則は通常、「何をしてはいけないか」のみを告げ、その理由までは語りません。この「戒め」と「未知」の狭間に漂う独特の感覚こそが、「照影の廟」における規則を解き明かしていくゲームプレイを着想する原点となりました。


このコンセプトを出発点として、次に取り組んだのは、「伝承や風習の中に存在する禁忌(タブー)」を、プレイヤー自身の選択や行動へと落とし込むことでした。そのために私たちは、互いに関連する二つの方向性から、「照影の廟」の独特なステージ体験を構築していきました。

ひとつ目は、民俗にまつわる禁忌です。「振り返る」「声に応える」「物に触れる」といった具体的な行動を、ダンジョン内でプレイヤーが迫られる選択へと変換しました。ただし、規則を最初から明確に提示してしまうと、探索を通じて未知のものを探り当てる面白さが薄れてしまいます。そこで私たちは、「民俗にまつわる禁忌」と「攻略の手がかり」をあえて密接に結びつけました。プレイヤーは、最初から完全な「安全マニュアル」を手にしているわけではありません。手探りで攻略の手がかりを集めていく中で、対応する禁忌の規則が少しずつ明らかになり、時には自らの行動によって、その禁忌を発動させることになります。

ふたつ目は、霊月にまつわる儀式です。霊月は、単に怪異を恐れるだけの時期ではありません。先祖を祀り、供物を捧げ、亡者を導き、送り出す――そうしたさまざまな風習とも結びついています。だからこそ、「照影の廟」は危険を避けながら脱出を目指すだけのダンジョンにはとどまりません。探索を進める中で、プレイヤーはこの廟でまだ完了していない一つの儀式が存在することに気づきます。何が欠けているのか、そしてどのように儀式を進めればよいのか――その答えもまた、廟に残された手がかりの中から探し出すことになります。

そして、目に見えない「規則」や「儀式」をプレイヤーの目の前に形あるものとして提示するため、それらを受け止める具体的な「物」が必要でした。


「照影の廟」に登場する供物や灯火、紙人形は、いずれも中国の中元節における祭祀の風習を参考にデザインしています。これらは雰囲気を演出するだけでなく、ステージ内で手がかりや警告を示したり、儀式を進めるための要素としても登場します。

供物は、生者から亡者への供養と敬意を表すものです。人々は食べ物や果物などを用意して先祖を祀るほか、帰る場所を持たない魂のためにも供物を捧げます。「照影の廟」では、供物の数や状態、置かれ方にも注目する必要があります。以前ご紹介した「霊月規則怪談」に登場した供物にまつわる戒めも、ここで一つの要素としてつながっています。

蝋燭や灯籠には、「道を照らし、導く」という意味合いがあります。中元節には、香や蝋燭をともしたり、灯籠を川に浮かべたりして、亡者の帰る道を照らす風習があります。「照影の廟」の儀式では、火の明かりが水面を照らすことで、普段は隠されている影が姿を現します。これは鬼月に灯火で道を導く風習を参考にしたものであると同時に、プレイヤーが手がかりを見つけるための重要な要素でもあります。

紙人形のデザインは、紙で人物や衣服、家などを作り、亡者のために捧げる祭祀の風習を参考にしています。伝統的な祭祀では、紙銭や紙の衣服、紙の家などを焼き、あの世の亡者へ届けるものとされています。「照影の廟」に登場する紙人形もまた、身代わりのような存在として見ることができる一方、そこに記憶や魂が宿っている可能性もあります。プレイヤーは紙人形と関わりながら謎を解き、この廟でかつて起きた出来事を少しずつ明らかにしていくことになります。

これらの物は、単なる祭祀の道具なのか、それともステージに残された手がかりなのか。何を伝えようとしているのか、そこにはどのような意味が隠されているのか――その答えは、ぜひ侠客の皆様ご自身の手で解き明かしてみてください。


禁忌の規則、霊月の儀式、そして祭祀の品々――これらを融合させることで、私たちが表現したかった「照影の廟」が形になりました。

「照影の廟」に足を踏み入れたばかりの頃、侠客の皆様は、まず危険を避け、一刻も早く出口を見つけようとするかもしれません。しかし、探索を進めるにつれ、廟内の異変は規則だけに関係するものではなく、かつてこの場所で起きた出来事を少しずつ浮かび上がらせていることに気づくはずです。残された手がかりを解き明かし、未だ終わらぬ儀式を全うしてこそ、初めてこの場所を本当に離れることができます。

私たちが願うのは、皆様が「照影の廟」を後にするとき、心に残るものが単なる驚きや謎解きの達成感だけではなく、そこに今もなお残る「執念」であってほしいということです。訪れたときは自らの逃げ道を探すためであったとしても、去るときには、かつてこの地にいた者たちの魂を導き、その帰路を送り届けるために。